シーン4

7/15
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 ひびきは部屋に入ると、真っ暗な部屋を見て、また申し訳なさそうに僕に言う。 「ねぇ、もしかして、もう寝てた? 私、起こしちゃった?」 「あ、いや……いつもこんな感じで過ごしているんだよ」 「そうなんだ」  僕は自分がひびきに会えず、裏切られたような気持ちで何も手がつかず、一日真っ暗な闇の中に落ちていたなんて言えるはずがなかった。それを取り繕ってから、キッチンに行き、ホットミルクをひびきに出した。 「タオルも使ってくれていいから。これも飲んで」 「ありがとう。あの、それでね……」  ひびきと並んでソファに座る。ひびきは言いにくそうにしているが、それをどう僕に伝えるかで悩んでいるようだった。そして、ひびきが零していく。 「実はね。昨日、帰りが遅くなった時に、お父さんにユーリの事を言ったの。そうしたらお父さんが、ユーリの事を知っているみたいで……その、変わった人だから、もう近づいたらいけないって言ってきて……。わ、私はね! 猛反対したんだよ!? ユーリは優しくて、私とシロを助けてくれたんだって! お父さんにはわからないって言ったんだよ! でも……行ったら家を出てけって言われて……。私、どうしたら良いかわからなくなって」  本当に悩んでいた様子で、たどたどしく言うひびき。  そうか。彼女の父親は僕の事を知っていたんだ……。  それじゃあ彼女を僕に近づけたくないのも……わかる。それは無理もない事だ。  僕はひびきに向き直って、 「じゃあどうしてこんな時間に来てしまったの? 親御さん、心配していると思うよ? 今からでも帰った方がいい」  僕が諭すように言うと、ひびきが悲痛めいた大きな声を出して、 「嫌なの!!」 「どうして!?」  僕は彼女を問いただすように声を荒げて言う。    僕の事を知っている親にそう言われたのなら、仕方の無いことなんだ。なんでこんなにも、ひびきは夜中家を抜け出してまで来てしまったんだ。これは僕に課された運命なんだ。ひびきには関係の無いことなんだ。僕が人に敬遠されるのは……仕方の無いことなんだ……だから、ひびきがここまですることないだろう!  僕は自分の想いを抑え込んで、平静を装って続ける。 「ダメなんだよ。もう君とは会えないんだよ。親御さんに心配をかけてまで会うことないんだよ」  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!