シーン2

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 僕は約束通り、次の日にシロを連れていつもの堤防に来た。  シロは僕の横で日向ぼっこをしながらスースーと寝ている。  昨日一晩、僕の家でシロは過ごしたけど、人懐っこくてとても可愛らしいと思った。  久しぶりの一人じゃない家で、僕は少し安心したようで、よく眠れたような気がする。  あんなにも、自分の手の中に温かいものを入れるのを避けていたのに、安らぎを抱くなんて……そんなことも考えた。  今はまだ昼過ぎ。彼女が来るまでまだ時間がある。   僕はいつものように読書をしようと、堤防の階段に座り、本を広げる。  今日は昨日よりも暖かい。僕もその温かい日差しを受けて、気分が良かった。  彼女が来たら、今日こそあの時のお礼を言おうと思っていた。  実際、これで人と深く関わることになって、戸惑いもある。でも、不思議と嫌な感じはしない。  そうしているうちに、夕方になってきた。 「ユーリ! シロー!」  約束通り、彼女がやって来た。僕は携帯電話というものを持ってはいない。だから、ここで待ち合わせする事だけが、彼女と出会う約束となる。  彼女の姿を見て、僕はどこか安堵感を抱いていた。口約束を守ってくれたのを、それが今証明されたのだから。  人と関わりたくないと思っていた僕なのに、こんな感情を持つなんて、僕はどうしたんだろうとも思わないこともない。その気持ちに今は肩を預けるのも悪くないのかもしれない。 そして、彼女がパタパタと走って僕たちの方へ来る。その顔は笑顔が散りばめられていて、とても可愛らしかった。 「ユーリ! こんにちは! これ見て! 駅前のお店で、これを買ったの!」  彼女が僕とシロに近づくと、手の中に小さな赤い首輪を持っていた。 「これ、シロに付けようと思って!」 「いいんじゃないかな? 可愛いと思うよ」 「ほんとに? シロー、付けてあげるねぇ」  ひびきはシロの細い首に赤い首輪を巻くと、留め金を留めて、頭を撫でた。 「ワン!」 「わあ! 可愛い! シロ、すごく似合っているよ!」  ひびきはシロを抱きしめながら頭を撫でる。その姿を見て、僕もまた嬉しくなってしまった。彼女の純粋な優しい気持ちを前に、とても心地よかったんだ。
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