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地味な女だと思った。ひょろりと背ばかりが高く女性的な丸みに欠ける華奢な身体を味も素っ気もない紺の事務服で包み、化粧っ気のない顔には黒縁の眼鏡を掛けている。歳は俺と同じくらいだと思うが、四十代のオバサンのような疲れオーラが放たれていた。
取り敢えずの愛想笑いを貼りつけて、俺は封筒を差し出した。
「これ、うちのポストに紛れ込んでた」
彼女は眼鏡の奥から差し出された封筒を見つめ、「ああ」と小さく声を上げた。
「ありがとうございます。ぱっと見苗字似てますもんね」
受け取る時、少しだけ笑顔を覗かせた。笑うと随分雰囲気が変わって、ちゃんと二十代半ばに見えた。そのギャップは印象的だったがその時はそれはそれまでのことで、俺は「じゃ」とだけ言って引き返そうとした。
「あ、あの、氷上さん」
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