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それから1か月ほどが経ち、僕の住む家は再び静寂を取り戻した。
隣のアパートに不法入居者が表れ、警察が来て、さらには報道関係者までやってきた。やがて解体業者がアパートを取り壊し、更地になったことで、ようやく静かな生活が戻ってきたのである。
あの後、3人の男達は、僕の予想通りS市の駅裏に現れ、〇〇〇システムのワンボックスカーに乗り込もうとしたところを捕まえられたようである。
3人の男達はM国出身の不法入国者であり、国内メーカーであるN社が販売する無線LANルーターの基盤をスパイチップを搭載したものに交換して、設置する作業を行っていたようだ。
ご丁寧にシリアルナンバーまで一致させて……である。
このような大それたことをやるくらいだから、当然3人の男達を雇用していたと思われる、〇〇〇システムもグルである。
〇〇〇システムは不法入国者をそれと知りながら雇用したという疑いをもたれ、現在取り調べを受けているところである。取り調べの中で、〇〇〇システムはM国出身者が経営する複数の企業から、フリーWi-Fiを設置する事業を請け負っていたことが発覚し、そこからさらに他の電気通信工事事業者に疑惑が浮上するなど、芋づる式に事件は大きく広がりをみせつつあった。
想像以上に騒ぎが大きくなったことで、〇〇〇システムとつながりのある企業や政治家が連日ニュースを賑わすようになった。
ただ、この国にはスパイ防止法が存在しないため、○○○システムは解散せざるを得ないにしても、3人の男達や○○○システムの関係者が重罪に問われることはないだろうといわれている。
僕はそんなことでこの国は大丈夫なのだろうかと不安になったが、その一方で良いニュースもあった。
〇〇〇システムがS市の公衆Wi-Fi利用環境整備事業から外されたことで、僕の会社がその事業を引き継ぐことになったのである。仕事は忙しくなったものの、今年の賞与はいつもより増えることになったから、僕としては嬉しかった。
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