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僕の住んでいる家の隣には古びたアパートがあった。声が聞こえた方角の窓から外を見ると、そのアパートの窓に明かりが灯っているのが見えた。既に住む人はいなくなり、そのうち取り壊されるものだと思っていたが、どうやら新しい住民がやってきたようだ。その一室から大きな話し声が聞こえてきた。
何を言っているのかはよくわからない。耳を澄ませてみると、どうやらしゃべっているのはこの国の言葉ではなく、外国語のようだ。
やれやれ……困ったものだと思ったが、直接苦情を言いに行くと波風が立つし、今日のところは我慢して、様子を見ることにした。
なんとなく、才蔵をこのまま独りでこの部屋に居させるのは可哀想に思ったので、僕は寝室のベッドから布団を持ってきて、今日はソファーで寝ることにしたのだった。
……翌朝。割と遅くまで話し声は止まず、僕は少々寝不足だった。
寝不足の目をこすりながら、才蔵の姿を探す。才蔵は変わらずにソファ―の下にいたが、朝になって周りが静かになったことで多少落ち着いたようだった。
僕は才蔵の食事を用意し、簡単な朝食を食べ終えると、出勤の準備を済ませ、自転車にまたがって、いつもより早めに家を出た。
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