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 駅に着き、改札を抜けると、すでに列車がホームに入ろうとしていた。僕は慌てて列車に乗り込むと、空席を探して車両の中を歩き始めた。  時間がかかるが、座って通勤できるのが、今の場所に住み始めた理由でもある。  車内を見回すと、制服を着た女子高生と思われる学生が席を立って隣の車両に移ろうとしているところだった。そこに出来た空席を見つけて、僕は一瞬凍った。隣に朝、カーテン越しに見た3人組が座っていたからである。  僕の顔はおそらく見られていないから、相手が僕を隣人だと知っているとは思えないが、さすがに気まずい。僕は、3人組から離れた車両の外れに空席を見つけ、そこに腰を下ろしたのだった。  3人は飽きもせず延々と会話を続けていた。ただ、さすがに列車の中では、周囲の目を気にしてか少しトーンダウンしていたようだ。    やがて、列車は目的地である終着駅、S市に到着した。僕はややゆっくりと列車を下りると、3人組の背中を見る形で、駅を出た。尾行をするつもりはなかったが、3人の進む先は僕の通勤経路と全く同じだった。  駅を出ると、〇〇〇システムという名前が書かれたワンボックスカーが停車していた。3人は手慣れた様子で車に乗り込むと、どこかに去っていった。 「おいおい、同業かよ。」  〇〇〇システムの名前はよく知っていた。同業というより、商売敵といった方が良いかもしれない。S市のWi-Fi利用環境整備事業――観光客等向けに無料で使える公衆無線LANを整備する事業――の入札で、僕の会社は〇〇〇システムに負け、受注を獲り逃していたからだ。
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