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 その日の昼休み、僕はアパートの管理会社に電話をかけた。すると帰ってきた返事はこうだった。 「現在、そのアパートには誰も住んでおりませんが。」  ……まさか幽霊!?  などと思うわけもない。いや、話していたのが外国語でなかったら、あるいはそう思ったかもしれないが、この場合は、あの3人組を不法入居者と考えるのが妥当だろう。僕はすぐさま警察に電話をかけ、隣のアパートに不法入居者がいることを通報したのだった。  帰宅すると、隣のアパートの前に複数のパトロールカーが停まっており、昨日までと別の意味で周囲は騒がしくなっていた。  僕の姿を見かけると、制服を着た警察の方が声をかけてきた。僕が警察に通報した人間であることを明かすと、警察の方はこれまでの経緯について説明してくれた。  隣のアパートにいた3人は、扉をピッキングにより解錠し、1人1部屋ずつ使っていたようだ。  夜は1部屋に集まって、酒を飲みがら食事をしていたようであり、不法入居者として、職務質問の形で警察が訪れた時は、2階の中央の部屋に皆集まっていたらしい。部屋の呼び鈴を鳴らし、扉をノックしても反応がないので、管理会社から借りてきた鍵を使い中に入った。しかし、その時には既に2階の窓から逃げ出した後だったようである。 「まだ付近に潜伏している可能性がありますので、戸締りをしっかりして、不審者を見かけたらすぐに連絡を下さい。」
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