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「すると、こっちが偽物ということか。」
おそらく帯電防止袋に入れられた基盤が偽物であることは間違いない。しかし、目の前でこうして見比べてみると、偽物にしてはあまりにも似すぎている。基盤のパターンから実装されたパーツとその配置まで全く同じと言っていいほどそっくりなのである。
偽物と思わる基盤に、もし本物と同じようにモデル名とシリアルナンバーが書かれたラベルが貼られていたら、きっと区別がつかないだろう。ラベルが貼られてさえいれば、例えメーカーに修理に出したとしても、メーカーは偽物と気付かずに修理対応するだろう。そう思わせるほど両者は似ていた。
僕は基盤に貼られたラベルを指差して警官に言った。
「これと同じようなラベルがありませんでしたか?」
すると、押収した物品の中に、ゴミ捨て場に捨てられた基盤に貼られたラベルと同じ形状のラベルと、ラベルを印刷するためのサーマルプリンターが見つかった。
ビンゴだ……ということは……。僕は目を皿のようにして、両方の基盤を見比べた。そして、偽物の基盤の上に、本物にはないチップが実装されていることを発見した。それは細かいパーツが多数隣接して実装されている部分にあり、余程注意して見なければ気が付かないような位置にあった。
僕が双方の違いを、偽物の基板上に実装されたチップを指差して警官に伝えると、警官は感心したように頷き、僕に聞いてきた。
「つまり、どういうこと?」
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