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「はい、できたよ。シュウちゃん」
ヒビ割れた部分を修正し、すっかりまん丸になった泥だんごを見て、春陽はふっと目を細める。そんな仕草も大人っぽい。
春陽は僕のことを「シュウちゃん」と呼び、僕は彼女のことを「ハルちゃん」と呼んだ。
名前の通り、柊の葉が茂る頃に生まれた僕と、春のやわらかな陽射しの日に生まれた彼女。
子供な僕と、大人な彼女。
泥だんご作りが下手くそな僕と、とても上手な彼女。
僕らは何もかも正反対だったけれど、ずっと一緒だった。正反対だったからこそ、一緒にいたのかもしれない。
と、春陽が合図のようにあくびをした。
「おひるね、しよっか」
猫みたいに眠そうに目をこすりつつ言う彼女に、僕は小さくうなずく。
これだけでもなかなかの出来だが、さらにピカピカな泥だんごを作るためには、形の整ったものを30分から1時間くらい日陰で休ませなくてはならない。
泥だんごに付き合って、僕たちもお昼寝だ。
「ほれ、起きんさい」
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