12人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてその夏、春陽は本当にアメリカへと旅立っていってしまった。
*
汗が不快に首筋をなぞる。
離れてからも僕らは頻繁に連絡を取り合い、夏休み中に一度は再会していた。だが、5年前――中学1年のとき、僕は自ら関係を壊してしまったのだ。
その年、部活で忙しいからとか、どうしても外せない用事があるからとか、適当な嘘をついて、初めて再会を断った。なんだか急に、彼女に会うのがむず痒くなってしまって。
二度と会えなくなるわけでもないし、気が向いたらまた連絡すればいい。そんな甘い考えは、見事に打ち砕かれることになる。
その日を境に、ぱたりと春陽からの連絡が途絶えた。
さすがに怒らせたかと思ったが、違った。彼女がアメリカでモデルデビューしたのだ。
いつも隣にいた彼女は、あまりにも呆気なく、手の届かない場所へと、華やかな世界へといってしまった。
失ってから気づくって、きっとこういうことだ。
最初のコメントを投稿しよう!