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 春陽と僕はご近所さん――物心ついたときから一緒にいた、幼馴染だ。  保育園の年長にあがったばかりの頃、僕らは泥だんご作りに熱中していた。よく晴れた日、保育園の帰りに、春陽の家の裏庭に集まって、作業開始。  土をボウルに入れて水と混ぜ、ひとすくいしてぎゅっと握り固める。まあ、ここまでは誰でもできるだろう。  泥だんご作りのセンスが求められるのは、形を整えるところからだ。砂をかけながら指で馴染ませて転がす、という工程を繰り返すのだけれど、当時の僕はどうにもこれが上手くできなかった。  同じことをしているはずなのに、どうしてハルちゃんが作るといつもたまごみたいにきれいになるんだろうと、嫉妬の入り混じった憧れを抱いていた。 「ゆっくり、コロコロって――」  すぐ隣、お互いの吐息さえも触れ合いそうな距離にいる彼女を、何気なく見つめる。  春陽は、体も心もやたらと大人びた子供だった。  保育園に着ていく、淡い桜色のスモックが似合わない。アメリカ人のファッションモデルである母親から受け継いだのだろうセピア色の瞳と、ふわふわとした栗毛は、不思議と見る者を惹きつけた。  心もまた、いじける僕の機嫌を損ねないよう、姉のように根気よく相手をしてあげられるくらいには、ませていた。
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