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ようやく空がすっきりとした青を見せたある日、母に呼ばれて玄関まで出ていくと、そこには休みなのに桜色のスモックを着た春陽の姿が。
「たまご、つくりたい」
と言って、無邪気に微笑む。僕が例えたあの日から、彼女も泥だんごのことを「たまご」と呼ぶようになった。
僕は快諾し、導かれるまま彼女の家へ向かう。道中、ずっと握られていた手は、じんわりと痛かった。
――どうしたの?
訊きたかったけど、訊けなかった。訊いたら、春陽が泣いてしまいそうな気がして。
家に着いてからは、ふたりとも無言で泥だんご――たまごを作って、お昼寝をして、仕上げをした。
僕が作ったのは、歪でデコボコ。春陽が作ったのは、まん丸でツルツル。
いつもと同じ。何も変わらない。変わらない。
出来上がったものは、いつも木の葉の上に乗せ、春陽のおままごとセットを使って、食べるふりをしながらすぐに崩していた。乾燥して割れてしまうと、彼女が悲しそうな顔をするから。
おもちゃのフォークを入れ、僕のたまごが、ほろろ……と崩れたそのとき、
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