火刑

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火刑

 飾られた遺影の輪郭に頬に髪に、そっと指先を這わせた。  触れた部分が体温で微かに曇ると今度はそれを拭うように、凹凸の無くなった在りし日の面影を追った。 「どうして逝ってしまわれたのですか。 僕は、まだ、何のお返しもできていないのに。 この身に受けた有り余るほどの――」  遺影の平面の瞳を唇を、そして細い首筋を、痣と傷痕の隠せない指先がなぞるようにゆっくりと左から右へ、這った。
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