カルナとクニャ

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 少年従者が姫君のとなりに飛び乗ったのは、カルナ自身のからだが宙に浮く寸前だった。ぐわりと平衡を崩しつつ、カルナは厭そうにして、イスファレイオスを威嚇して、低くうなった。クニャは自分のものなのだから、気安に触るな、とまぁ、こういうことだろう。  上空からであれば、王都への道のりを広範囲に見渡せる。族長とシェリアが見つかるのも時間の問題である。  カルナの薄手の羽根は風をはらんで飛ぶ。リフィアはずっと気になっていたことを思いだして、いまこそとカルナに尋ねかけていた。 「『クニャ』って言うのは、ひとの名前でいいのかしら。ほんとうはどういった意味を持つことばなの?」  カルナから問いかけへのこたえをもらうよりも、シェリアらを護送していると思われる一団を見つけ出すほうが、数瞬早かった。  カルナはふわりと騎鳥の一団の前へ降り立った。即座に逃げ腰になる鳥たちをなだめ、兵士たちはそれぞれに剣の柄に手をかけた。剣などカルナにはたいした脅威ではないことは、イスファレイオスの話で承知済みである。  リフィアはさきほどとほとんど同じことばを繰りかえす。 「わたくしは、ヌウマーンの娘です! あなたがたも、ご覧のとおり、クトゥ族は竜の加護を得ています。なお、我がクトゥ族に刃をむけ、父を咎人として王都へ連れていくとおっしゃるのであれば、こちらもいっさいの容赦はいたしません!」  高らかな宣言は道をひらく。一団が裂け、そのなかから、姿をみせた者があった。     
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