カルナとクニャ

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 こうして、姫君は竜の背に乗せられた。一段高い位置から見渡すと、兵士たちの表情までもよく目に入る。満身創痍と見えて、武器を置くのも時間の問題のように見受けられる。リフィアはことばを選んで、彼らの戦意を削ごうとした。 「……ごらんになったでしょう? このとおり、クトゥ族は竜の加護を得る部族と心得なさい。それでもなお、あなたがたがクトゥ族に刃をむけるとおっしゃるのであれば、こちらもいっさいの容赦はいたしません」  半分以上、はったりだった。周囲をだますのは気が引けるが、これもおたがいに傷を少なく済ませるためであると自分を納得させる。  竜を手懐けた娘に、逆らう者はなかった。武器を持つ手を下ろした彼らに、リフィアは大声で問いかける。 「族長のヌウマーンと、娘はどこに?」  これには、兵士らは口々にふたりの行き先を告げた。代表となって発言する者がいないらしい。やがて、自分たちでも悟ったか、ことばでの返答はあきらめて、いっせいに同じ方角を指さした。  ──北北東。それは、クトゥ族の集落から王都へむかう際に通る方向だった。  沙地に出て、カルナは背にたたんでいた翼を一度大きく広げて見せた。沙をあおぐようにして羽ばたく動作を繰りかえす。だんだんと力強くうしろへむかって翼をはためかせる。  風に煽られて、リフィアはカルナの背にいながらにして、何度もからだの浮きあがる感覚をあじわう。     
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