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黒髪の、自分と同じ顔立ちをした娘だった。
リフィアはカルナの背を飛びおりた。どちらともなく駆けよって、抱きしめあう。
呼び合っていた半身が、もとどおりになるようなだった。
「……リフィ。魚料理のお店、つれてってあげられなくてごめん」
「いいわ。今度、つれていってくれれば」
緊張感のないやりとりのあと、泣き崩れたシェリアのそばに立ってふりかえった姫君に、イスファレイオスは歩みよる。
「──クニャは『愛しい』って意味だとさ」
告げたことばに、カルナはばさりとつばさをひらめかせる。
つばさによって起きた風に乗り、沙が舞う。かつてクニャだった娘を求めて、ひときわ高く響いた声はやがて、まどろみとともに消えていった。
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