我が姫殿下

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(つまり『従者の能力に感服します』がないのね、きっと、わたしには)  リフィアだって、がんばってはみたのだ。たとえば、召使いに対して顔をさらすことなど、なんとも思わない。でも、『そうではない』という前提で接してみようとした。  あれは、人間。対等な、男性。  そう考えると、ますますシェリアのような行動が出来なくなった。動きは制限される。しかしながら、そうまでしたところで、自分は彼らの能力とやらを目のあたりにしたことがない。こればっかりは努力だけではどうしようもなかった。  ──いや、見たことがないほうが、平和でよいのだろう。この旅のあいだも、できれば、お目にかからないでいられたらと思う。  ズル・オムドは体術の名手だという。相手の力を受け流し、やりかえす。護身術といえば聞こえはいいが、彼の技が生きるのは戦の場。要するに人殺しの技量なのだ。  いまひとりの従者──アクァンタに至っては、最初の段階でつまづいてしまった。人間だと思うのがむずかしかったのだ。食事の準備をする姿からは想像がつかないが、彼は《竜の末裔》なのだった。     
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