我が姫殿下

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 《竜の末裔》とは何か。ひとくちに説明できるものではないが、リフィアの知るかぎりの情報を集めてみると、彼らは『ある要件を持って生まれた存在であり、特殊な教育を受け、一定の戒律を守りながら力を行使する禁欲的な僧侶に似たひとびと』だ。  言いあらわしかたがひどくあいまいなのは、アクァンタ以外の《竜の末裔》を知らないからだった。アクァンタに限っていえば、『左頬一面にうろこ模様の赤色のあざを持って生まれ、幼な子のうちに修道院と俗に呼ばれる学校に預けられて十二歳まで育ち、ひとことたりとも声を発してはならないという沈黙の業を行っている』二十歳前後の青年だ。剃髪しており、表情が変わることもほとんどない。なかなか端正な顔立ちだとは思うが、内面が出ているだけだろう。ズル・オムドほど他人の目をひくものではない。  右斜め前に腰かけて食事を摂るアクァンタの手を、ひたと見つめる。黄色い肌はここまでの道のりで、いささか焼けている。ふだんは学者のようにこもってばかりだと言う。 (だから、何だっていうのかしら)  あまり興味がない。シェリアはことあるごとにズル・オムドやアクァンタの特徴やクセ、嗜好などを教えてくれるが、リフィアにはその情報の使い途がわからなかった。なぜって、彼らはすでにシェリアの従者だからだ。 「マ・ラクム、いつもの旺盛な食欲はどこにやったんです。まさかとは思いますが、ひさかたぶりのブルクァがお邪魔でしょうか?」     
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