我が姫殿下

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「マ・ラクム! あなただけならまだしも、ラクム・リフィアまで不真面目な遊びに誘うんじゃありませんっ。いまあなたがたが今日の予定を把握しないで、どうやってことを進めるおつもりですか!」  ズル・オムドは卓に両手をつき、なかば腰をあげた姿勢で、容赦なく主人を叱りとばす。シェリアにならってからだを縮こまらせてやりすごしたつもりだったが、なれぬ大声にやられたらしい。きーん、と余韻が残っている。  直撃をうけたのだ、シェリアなどはブルクァの裾から手をいれて、涙をぬぐうしぐさをしている。怖かったから、ではないだろう。単純にからだが驚いてしまったに違いない。現に、自分もそういう状況である。  一気に静かになった場で、アクァンタが手を挙げる。なんだ? と問われて、うつむいたまま、顔の横に掲げた手指をくるくるとすばやく動かした。 『いかにも正論だ。だが、はじめて世界を目にした妹にいろいろと教えてやりたい気持ちも、理解すべきでは?』  一拍おいて意味を読みとり、ズル・オムドがぐっとことばに詰まる。手元の白湯の水面だけを見つめるまなざしには、感情のゆれがない。穏やかに反論し終えて、卓上に腕を戻し、アクァンタはこちらを流し見た。その場で手首から先をひらめかせる。 『会見のあとに時間をつくります。行きましょう、魚料理を食べに。私がシェリアさまにお教えした店、味は保証します』     
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