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(末子相続なんて決まり、だれがつくったの。欠陥だらけだわ)
年長者を重んじる風習のあるなか、なぜこの一帯はあえて末子相続を選ぶのか。
末子はときに十数人といる子どものなかで、常にもっとも若い。兄弟のだれよりも長く父母を世話することができるというのだ。
(仮定に過ぎないわ。それに、)
双子の長幼ほど、決めにくいものはない。シェリアは先に生まれ、リフィアは後だった。ひとによれば、母の胎のなかでうえにいるほうを兄や姉とする考えかたもあるらしい。
もしその考えかたがとられていれば、いまごろもっと違った人生だったかもしれないのに。……いや、こうして生きていたかどうかも怪しいかと、すこし考えなおす。
リフィアは総領姫として育った。来る日も来る日も勉学ばかり。おまけに喘息持ちで、雨が降ってはよく寝込んでいた。
双子の姉に比べて動きの鈍いこどもで、転んだ拍子に火箸で背中に大きな火傷を作り、ひと騒動起きたこともある。自分の目で見たことはないが、ずいぶん大きな火傷が残っているらしい。とは言っても、それだけの大けがをしておきながら、リフィアにはその転倒の記憶がない。よっぽど痛くて忘れてしまったのかもしれない。
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