竜殺しの少年

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竜殺しの少年

 まなざしの先で、蜜色の指が踊った。三つの動作を延々とくりかえし、時おり、ためらいをみせる。さきほどシェリアがしていたのと同じ動きだと気がついて、リフィアはうつむきがちだった顔をあげた。 『リフィア、ラクム・リフィア。ご気分が、すぐれませんか?』  気遣わしげなようすはみせない。ふだんどおりに侍者たちと会話をかわし、こちらには背を向けながら、ズル・オムドはうしろ手に組んでいた指をうごめかしている。 (答えたって、見えないではないの)  持ち上げかけていた腕を下ろし、リフィアはヴェールのうえにのぞいている双眸を笑ませる。それから、手にしていた酒杯をヴェールの下に潜り込ませ、軽くあおった。  杯の中身は果実酒好きのリフィアのためにと、長老が用意させたナツメ酒だった。とろりとした黄金色の酒は舌をくるんで、甘みと独特のかおりを残していく。きけば、薬酒なのだという。血のめぐりが悪いときと、腹を壊したとき。薬効を指折り告げて、長老は呵々大笑した。     
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