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君の隣に
「えー、本日より赴任してきたトリズ・テーラーだ。まあ、よろしくな」
怠そうに迷彩服を着崩した中年の男は、後ろ頭をボリボリ掻きながら自己紹介した。彼の前に整列した185体の蝋人形の顔に戸惑いの色が差す。
「国境線の警備は大変だが、戦争もじきに終わる。お互い励まし合い、助け合って乗り切ろう」
動揺が波のように全体に広がり、兵士たちは互いに顔を見合わせた。新しい長官は部下たちを見回し、「全員の顔と名前覚えんの、大変だなぁ」とぼやいている。
「あ。そこのお前。えーと952番。名前は?」
一際暗い表情で端に立っている男は、虚ろな目だけ上げた。
「リア・クロードです」
「リアか。よろしくな。部屋と小部隊に分けて、全員の名前表にしてくれねえか」
「承知しました……」
「頼んだぞ。じゃあ張り切って仕事すんぞ」
一番張り切っていない様子の長官は、それだけ言うと背伸びして事務室に引き上げていった。
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