コテージにて

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 まだ水分の残る薪が爆ぜる音は、暗闇の住人を遠くへ追い払う。付いて来た足音もいつのまにか消えていた。  何も知らない仲間たちは、まだ酒を煽っていた。この空気を壊したくなくて、普段飲まない酒を飲み、無理やり眠った。  次の日。  目覚めたら、既に数人の仲間は起きていた。  小雨は未だに降り続いているようだが、清々しい朝日は布団に包まったままの私の所まで届いていた。  風呂場の出来事を話そうかとも思ったが、せっかくの楽しげな雰囲気は壊したくない。きっと昨日の事は、自分の中の恐怖心が見せた錯覚だ。  起き上がり、メガネがない事に気付く。記憶を遡れば、風呂場で外し、洗い場の一番すみへ置きっぱなしだ。  時刻は8時過ぎ。日が差し込んでいるから、取りに行っても大丈夫だろう。大丈夫、とかんがえる時点で、怯えている自分を自覚する。まったく馬鹿げている。目に見えないものに怯えて、何になる。  昨夜はあんなに怖かったのに、朝の山の空気を吸って、気が大きくなっていた。 「朝風呂に入ってくるけど、みんな行く?」  声をかけるが、仲間は出発間際に行くと言って、またもや 一人風呂。  しかし昨夜とは一転し、林道は爽やかだった。小雨こそ残っているが、清らかな空気だ。森の気配も気にならない。     
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