貴女の愛

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貴女の愛

「先生、私の想いを受け取ってください」 よく私の仕事を手伝ってくれた、彼女は卒業式が終わるとすぐ私の元に駆けつけてきた。 顔は一生懸命走って来たからだろうか、沈みゆく夕日の如く真っ赤な顔である。息も「ハァハァ」と切らしながらも、なんとか平常の呼吸を保とうとしている。 「ありがとう」 手紙を受け取り、封を開ける。 手紙は丁寧だけども、少し丸い女の子らしい文字で、彼女の想いが綴られていた。私はその内容に大いに衝撃を受けた。まさか彼女が私に恋心を抱いていたなんて…私は彼女の気持ちに誠実に応える義務があると感じた。それは男としてなのか、教師としてのなのかは、分からない。でもそれはどうだっていい。 私は真剣な表情を意識的に作り、真っ直ぐに期待で煌めいている彼女の瞳を見つめる。彼女が優しげに微笑む。その綺麗な顔を見て私の心は痛まずにはいられなかった。だってこれから彼女にとって残酷な答えを教えてあげなければならないから。 「貴女の気持ちは嬉しいです…ですが私にはもう婚約者が…」
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