覗けばとける、

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覗けばとける、

 雪が積もると、センチメンタルな気分になる。  今でもぼんやりと覚えてる。  小さい頃の、ちょっと寂しい記憶。  小さいからだで、お父さんに手伝ってもらいながら一所懸命作った雪だるま。  頑張ってつくって、  顔もつけて、  名前もつけた。  次の日には溶けてしまった。  あの時私は泣いたっけ。  それとも、茫然としてなく余裕もなかったかな。  遠い遠い昔の記憶。  雪の日はいつも、思いだす。 「・・・雪って、なんで溶けるんだろうね」 「俺たちの愛が熱すぎたんじゃない?」 「そう言うふざけた話はしてないの」 「今の照れる局面だよ?」 「ねえ、なんで溶けるんだろう」 「・・・そりゃ、春も近いしなぁ」  寒さの中に、時折暖かさを感じる二月の日。  振っては溶ける不規則な雪。  彼と二人、並んで歩く。  とけかけた雪の積もる道。 「・・・なんで、溶けなきゃいけないんだろう」 「ん? なに? どういう意味?」 「・・・特に意味ない。独り言」 「ふぅん、君は時々面白い独り言を言うよね」  溶けかけた雪に触れてみると、当たり前のように冷たい。  手の温もりに触れた雪は触れたとこから溶けていく。  何だか悪いことをしてる気分になる。
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