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「おい! まてよ達也! 俺、お前がいたから、中学でくさっていた俺に、お前だけが声をかけてくれたから、お前と一緒なら・・・・・。って思って、そう思って、バスケ始めようと思ったんだぞ!!」
退部届を出しに職員室へ向かう俺の肩を、光がつかむ。俺はその手を振りほどき、
「うるせぇなぁ! バカじゃねーのか! 何のために猛勉強してこの高校に入ったと思ってんだよ! お前、バスケみたいな下らねーことばっかやって、受験失敗したら、それこそ負け組だからな!!」
このとき、光は、これまでに見たことのないような顔をしていた。
これが俺と光が交わした最後の言葉になった。
―
結局、光はスタメンにはなれなかったものの、主将としてインターハイに出場した。全校集会で、県大会の優勝旗を校長に手渡す光の姿を、俺は直視することができなかった。
―
3月、各大学の合格者の名前が職員室前の掲示板に張り出される。それは、左上から難易度順に並んでいた。柴田光の名前は、一番左上、国立医学部の欄にあった。一番右下にある俺の名前と最も遠い距離だ。
―
カタカタカタ。
ダン!! ダン!!
「ちっ!」
今、俺はネットカフェで、自分の大学より下の偏差値の大学を探す検索を繰り返し行っている。
カタカタカタ。
ダン!! ダン!!
そうしないと自我を保てない自分がいた。
カタカタカタ。
ダン!! ダン!!
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