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「おら!! ぼーっとすんな! 走れ!」
上級生の怒号がとぶ。
憧れていた部活の練習は、自分が想像していたものよりも、ずっと、ずっと、つらいものだった。
「またお前か!! 経験者のくせにそんなパスにも反応できないのか!」
「もういい! ボールはしばらく触るな! コートの外でシャトルランでもしてろ!!」
また、怒号がとぶ。
「ちっ! 達也と同じチームかよ! これじゃ俺たち紅白戦勝てねーじゃん!」
強豪校だけあって、地区選抜クラスの上級者がごろごろいるようなチームだ。練習についていけない俺は、次第に同期からもバカにされるようになった。
「走れ!」
「だから、何度も何度も外すな!!」
今日も繰り返し繰り返し怒鳴られる。
一方、光は、
「もう一回お願いします!!」
「もう一度!!」
「パスください!!」
「達也。もう一回やろう。俺も一緒に走るから。」
どこまでも、ひたむきで、一生懸命だった。一人だけ初心者で、一番浮いているのに、それでも、弱音は絶対にあげない。
「光! もう一回いくぞ!」
「おーっ!光はすげーな。初心者なのに。」
「あいつ、まだ残って練習してるぜ。なんつーか。あいつ見てると熱くなってくるよな!」
俺とは対照的に、いつしか光は、チーム内でも一目おかれる存在になっていた。
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