1.気ままな一人暮らしの終焉

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1.気ままな一人暮らしの終焉

 ノバカナリアス帝国に、魔石集めで生計を立てているフリードという若者がいた。  彼は、ダンジョンの比較的浅い階層を潜り、弱そうな魔獣たちを倒して体内から輝く魔石を(えぐ)()ると、ギルドへ持ち込んで金貨と交換する。  同業者は、深い階層まで潜って、命を()して強い魔獣を倒し、大きな魔石を得た。フリードは、そんな連中の背中に向かって、軽蔑の眼差しを向けて鼻を鳴らす。 「フン。何、がむしゃらにやってんだ? 馬鹿か、あいつら。死んだら、おしまいじゃないか」  ギルドの窓口で、カウンターの上に魔石の入った麻袋がゴロリと置かれると、目映く光る金貨数枚が滑るように出てくる。これを手にして、足取りも軽く繁華街へ繰り出す。そうして、宵越しの金は持たぬとばかり、鯨飲馬食し、あらゆる娯楽に興ずる。翌朝、宿屋へ戻った彼のポケットというポケットを裏返しても、埃しか出てこない。  これが彼の日常であった。
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