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ルナは、逃げ帰ってきた息子の怪我に狼狽える。頼りになるのは、冷静なオートマタたちだった。
ミーナが医者を呼んで治療をしてもらったが、藪医者だったらしく、フリードは傷口が膿んで全身に毒が回り、高熱に苦しんだ。カリーナは店番を手伝うので何度も中座したが、ミーナは彼につきっきりで額を冷やし、体の汗を拭いてやる。
「なあ。ミーナ。お前の手って、金属みたいに冷たいと思っていたが、少しは温かいのだな」
額に触れたミーナの手に目をやったフリードは、弱々しい声でそう言った。
「私は魔力を動力にしていますが、動くと中の熱が表面に伝わるのかも知れません」
「理屈はいい。……なんだか、ホッとする」
「どうしてでしょうか?」
「冷たい手をした人間みたいだからさ」
「――?」
「この国の格言にもあるだろう? 『手の冷たい者は、心が温かい』と」
「そうおっしゃていただけると、とても嬉しいです」
ミーナが珍しく微笑んだ。
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