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「おっと、動くなよ」
「……」
冷たい刃が肌に触れるのを感じ取り、ぞわっと鳥肌が立つ。
心臓を鷲掴みにされるような恐怖に、さすがに舌の根が凍る。
そんな風に怯えて震える様子は、何にも増して可憐で可愛い。
このまま腕に抱き締めて慰めてやりたくもあり、逆に、余計に踏み躙って完膚なきまでに蹂躙したくもなる。
相反する感情に、史郎はいつも悩まされる。
こんなに誰かに執着した事などない。
喰らい尽くしたいくらいに、誰かを欲した事などない。
誰かを愛した事など…………これまで一度として無かった。
いったい、この感情はどう処理すればいいのか?
そんな懊悩など、当の聖は知らぬであろうが。
――――シュ、シュ……。
滑らかな肌の上を剃刀が撫でるように動き、淡い陰りの面積が刈り取られていく。
「う……」
不気味で不快な感覚に、聖の眼は苦し気に閉じられる。
少しでも動いたら、本当にすぐ傍の雄芯を傷付けられそうで、怖くて仕方がない。
(なんで……オレはこいつなんかに、こんな目に遭わされなきゃならないんだ)
理不尽な運命に、聖の目尻からは涙が零れ落ちた。
「――――さぁ、綺麗になったぜ」
「……」
「ハハハ、ガキみてぇだ。こんなパイパンじゃ、恥ずかしくて他の野郎の前じゃあ裸になれねぇな」
剃毛された姿は、本当に幼気な少年のようだ。
しかし、乳白色の綺麗な下肢には、形のいい雄芯が確かに大人の姿を現しており、少年ではない事を誇示している。
だから余計に――――史郎は劣情を覚えてしまう。
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