2 ~His true intention~

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 そうとなれば、幾ら何でも聖を解放しない訳にはいくまい。 (さぁ、いつものようにキレて、オレをボコボコに殴っちまえよ)  わざと隙を見せる為に、手にしたドスの角度を変える素振りをして視線をそらす。  さすがにこれなら、史郎も反撃のチャンスとばかりに、一気に殴り掛かって来ると思ったのだが――――。 「ふん? オレも舐められたもんだな」 「っ!? 」  意に反し、史郎はドスを突き付けられたまま平然と嗤い返して来たのだ。  焦ったのは、聖の方だ。  このままでは、こちらの分が悪い。 「あ、あんたは! オレが刺さないとでも思っているのか!? 」  すると、史郎は鼻をフンっと鳴らして答えた。 「刺せないだろう、お前は。もしもお前が青菱の若頭を傷付けたとあっちゃあ、天黄組は落とし前を付けなきゃならなくなるからな。そうなると、お前の大事な親分に、とんでもない迷惑が掛かる事になる」 「くっ……」  思った以上に、冷静な男であったようだ。  聖の策略など、とうにお見通しだったという事か。  力なく、手にしていたドスを床へと落としたところに、外で控えていた史郎の舎弟がバッと駆け寄って来た。 「こいつ! 若頭になんてモンを――」 「……は、離せ! 」  逆手に捻り上げられ、聖は抗議と苦痛の声を上げる。  すると、史郎は冷たい口調で「おい」と声を発した。 「こいつをオレの部屋に入れる時は、ちゃんとボディーチェックをしろと言っただろう。オレの話を聞いていなかったのか? 」 「す、すみません! ですが――」  言い掛けた舎弟の顔面に、史郎の拳がめり込んだ。 「――っ」  血が飛び散り、折れた歯が床に転がる。
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