対峙

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青年スパイと死んだ男は仲間なのか? ディルは困惑したまま、男から奪い取った銃を青年スパイに向けた。 「なっ、お前、メルトかよッ」 青年スパイが言う。 「違う。こいつは、僕と会う前にすでに毒を飲まされてた」 「そんなはずねぇよ。アニキは凄腕だ。バレンに来て、水しか口にしてねぇッ。俺が普通に街で食事をして、アニキが見張ってメルトを誘い出す。そういうはずだったのにッ。なんでッ」 水しか? ……そんな……? 青年スパイに銃を向けながら、気づけばディルは身体中が冷や汗にまみれていた。 さっき男に告げた『焦りは禁物』の言葉が、ディル自身に返ってくる。 脳みそが、思考が溶けるようだ。 メルトは誰だ? ダメだ。 冷静に……。 溶けていく思考を、固めろ。
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