対峙

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対峙

中年男性を尾行して、そうして最後にたどり着いた場所を見て、ディルはますます中年男性がメルトの線が濃くなってきたなと、そう思った。 中年男性が入っていったのは、あるホテルだ。 見覚えのあるホテル。 そこはあの青年スパイの宿泊している場所なのである。 中年男性はメルト。 あの屋台で青年スパイを殺そうとしていた。 ところがそこに自分がいたもので、計画を変更してホテルで殺すことにした。 そう考えるとつじつまは合う。 ならば今、中年男性は青年スパイの部屋で殺す工作をしている最中なのだろう。 ディルは急ぎ足で、中年男性を追ってホテルに入った。 非常階段、従業員通路。 フロントを通らずに潜入する方法などいくらもある。 そうして青年スパイの部屋の階まで来たディルは、エレベーターホール前の柱の影に隠れて、そっと青年スパイの部屋を伺う。 出てくるところを押さえる。 そういう算段である。 だが、 《ガチャリ》 不意に背中から響いた音に、ディルはゾッとなった。 銃の撃鉄が起こされる音だ。 「振り向くな。そのまま質問に答えろ」 背後からしたその声は、屋台の前で聞いた中年男性のものだ。 やられた。 ディルはただ死を覚悟する。     
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