メルト

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メルト

バレン共和国に着いたディルは、いったんホテルにチェックインした。 部屋に入り、まずは念入りに盗聴機などのチェックをする。 それから、ディルはベッドに腰かけて考えた。 第一にメルトとは何者なのか? この答えはほぼ確定している。 メルトはバレン共和国が雇った殺し屋だろう。 メルトが殺すのは、この国の隠している秘密を暴こうとするスパイばかりだ。 それで得をするのはバレンだ。 メルトはバレンの意図に沿って殺しをくり返す。 つまり、メルトはバレンとぐるだ。 それは容易に想像できた。 では第二に、メルトはどうやってスパイを殺すのか? 毒を使うのはわかっている。 問題はどうやって毒を投与するのか、だ。 ミスターから見せられた写真の連中に外傷はなかった。 ミスターがそう言っていた以上、それは諜報部が念入りに調べての結果に違いない。 ならば注射痕すら無かったと思って間違いないのだろう。 皮膚から投与される神経毒でもない。 その場合は、その効果は全身に出る。 臓器が溶けるのではなく、呼吸器にこそ効果が顕著に表れるのだ。 口から毒をもった、と考えるべきだろう。 そうなると考えられるのは食べ物への混入である。 だからディルは水を大量にもってきて、それだけでなんとかしようと思ったのだが……。 そう。 熟練の諜報部員は、1ヶ月程度なら水だけで平然と活動できる。 だったのだが……、 その水は全て空港で没収された。 国家方針だそうだ。 やはり国家はメルトを支援している。 ふと、ディルは部屋の水道を見る。 一見して普通の水道に見えるが……。 「ホテルの水道は怖いな。……けど、メルトの殺しは無差別ではない。公共施設の水ならば安全だろう」 それからディルは窓辺に向かい、バレンの街を見る。 なんとも近代的に整備された未来的な街並みが見えた。 この国が隠している情報には価値がある。 だから、きっと今この瞬間も、街のいたるところにスパイが溶け込んでいることだろう。 「……行くか……」 メルトもまた、この街の中に溶け込んでいるのだ。
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