ミートボール

14/15
2627人が本棚に入れています
本棚に追加
/448ページ
泣き止むまで背中を摩り 抱きしめていると 雪は おずおずと顔を上げる。 指で涙を掬い 鼻をちょんちょんと突き 「また。鼻真っ赤になってる。」 チュッと鼻頭にキスをすると 恥ずかしそうに 手で涙を拭き すまなそうに 小さく微笑んだ。 少しすっきりしたのかな。 辛くなかった筈が無い。 新しい事を知れば知るほど 今までの自分が置かれていた状況との違いに 戸惑い 苦しみ 混乱しているのも知っていた。 でも。 うん。 雪はやっぱり笑ってる方がいい。 抱きしめたまま カウンターへと目をやる。 「飯。冷めちゃったね。家に持って帰ろうか。」 このままここにいるより ゆっくり出来るし。 頷くのを確認して 回していた腕を緩めると 店の外から 騒ぎ声が聞こえてきた。 あらら。 もしかして。 片腕を雪の腰に回したまま 大型スクリーンの リモコンを取り 電源を入れる。 ゴーン。。 初詣客が参拝する映像と共に 除夜の鐘の音が鳴り響いた。 あー。やっぱり。。 二人で顔を見合わせ 苦笑する。 「誕生日。終わっちゃった。」 残念そうに聞こえたのか 雪はふるふると首を振り 「今までで一番嬉しい誕生日でございました。 司様。ありがとうございます。 あ。。それから。。」 続けようとする言葉に上から被せる。 「明けましておめでとうございます。」 一字一句ずれる事なくぴったりと。 雪は また目を見開き くすっと笑う。 こうやって。 いただきます。も。 ご馳走さまも。 これからは いつも一緒だ。 そっと唇を合わせる。 これからはずっと笑っていられるように。
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!