電話越しのきみとあなた

2度目の誕生日

浩太郎さんと知り合ったのは、有名なゲイ専用の出会い系掲示板。
なりすましや冷やかし、サクラが多いこの界隈に、珍しくまともそうな投稿をみつけた。

名前：K
本の話ができる人がいないので、時々話し相手になってくれる人、募集。
恋人なし。ヤリ目的、中傷冷やかしお断り。
連絡待ってます。

短い文章だったけど、なぜか惹かれた。
俺はすぐにメールを送った。
本なんてカケラも興味なかったけど。

ゲイの出会い系なんて、2、3回メッセージのやりとりして
日時決めて、さくっと会ってセックスして、おしまい。

そんなそっけないものが大半だ。
俺だって、女とするようなまどろっこしいメールのやりとりなんて
面倒だと思うし、そんなのを求めてる奴なんていない。

でもそのときの俺は、一人暮らしの無音の部屋の中で、会ったこともない男を想像して会社の同僚を少しずつ知っていくように、見知らぬ誰かを少しずつ知る面倒くさいことをやってみたい、という気になっていた。
ワンチャン機会があれば…なんて下世話な淡い期待を抱きながら。