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「時々話し相手になってくれる人」とあったので通話がメインかと思っていたけど、
浩太郎さんはしばらくメッセージで最近読んだ小説やビジネス書のことを教えてくれた。
俺は当然本なんて読まないから、
「そうなんだ」とか「面白かった?」くらいしか
反応できなかったけど、特に何も言われないし、ただ誰かに聞いて欲しいだけの人なのかと思って特に俺からも何も言わなかった。
2週間を過ぎたあたりから、気持ちも落ち着き、
フェードアウトしようかと思っているところに浩太郎さんのほうから
「今日、電話できる」
とメッセージがきた。
俺は即「いいすよ」
と送った。
それは、彼にはじめてメッセージ送って3週間後、ちょうど俺の誕生日の朝だった。
✱
仕事中、ちらちらとスマートフォンの通知画面を確認していると、
同期の紀田に肩をつつかれた。
「高城、おまえ、なんか落ち着かないな。どうした、彼女からの連絡待ちか」
「…うっさい。俺に彼女いないの知ってるだろ」
「だよなぁ~。おまえ、そこそこ顔いいのに、もったいない。
ま、俺には負けるけどな」
にやにやしながら軽口をたたいてくる。嫌な奴ではないんだけど、時々どうしようもなく面倒くさい奴になる。
浩太郎さんは、仕事中には絶対にメッセージを送らない。
おそらく通勤中の8時台か帰宅後の夜9時台に返事がくることが多い。
それでも俺は、その日の昼休みや休憩時間にやり取りしていたメッセージを見返して、
ぼんやり話す内容を考えていた。
よく考えれば、掲示板で知り合った人と会わずして通話をするのは初めてのことだった。
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