2度目の誕生日

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夜8時半。 帰宅して、適当に買ってきたコンビニ弁当を食べて、さっと風呂に入った。 浩太郎さんからの連絡は、まだない。 テレビをつけながら何とはなしに掲示板をのぞく。 匿名の欲に飢えた奴らがずらりと並ぶ。毎日数十件の投稿が生まれ光の速さで流れていく。 俺が掲示板を暇つぶしに使い始めたのは高校生の頃だった。 自分のセクシャリティに気が付いたのは中学生。その時はやり場のない気持ちとあきらめで、彼女をつくって浮足立つ同級生を尻目に達観した気になった。 投稿を出すと、早ければ30分ほどでメッセージが飛んできて、タチなのかネコなのか、会える日時、そんな簡単な情報がやってくる。相手の年齢さえ分からない時もザラだ。そんなもので事足りる世界。 記念すべき初体験の相手は、5つ上の22歳大学生だった。 茶髪にほどよく遊んでいそうな、「好青年」を装ったお兄さんだった。 一目見て、「大学生?」と言われたことに少なからず気持ちが高揚したことを覚えている。 相手に年齢は伝えていなかった。 ……あの頃は、自分で言うのもなんだが、びくびくしているのを必死にこらえてかわいいもんだった。きっとそういうものは全部ばればれだったのかもしれない。 俺があの時のお兄さんの年齢をとっくに過ぎた今、10代の子をわざわざ選ぶなんて選択肢はない。どう扱ったらいいか、きっと戸惑う。 だらだらと掲示板を流し見していると、スマートフォン上部にSNSアプリの通知を知らせるポップアップが表示された。 「お待たせ。今、大丈夫」 浩太郎さんからだ。 2分ほど間を空けてから 「大丈夫です」 とそっけなく打ってから、あの頃と何にも変わってないなと一人、苦笑した。
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