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俺の隣にはいつも一人の幽霊がいる
俺は幼い頃から幽霊が視える。
そうは言っても、視たことがあるのは一人の男の子の霊だけだ。
彼は俺が物心ついた時から高校生になった現在まで、ずっと5歳くらいの姿を保ったまま俺のとなりにいる。黒目に黒髪、血管が透けてそうな白い肌。そして幽霊らしい死装束。
彼には名前がない。だから俺はずっとこの彼を『君』、また心の中では『彼』と呼んで過ごしている。
お互いに触れることは出来ないが、喋ることも姿を見ることも出来る。
彼は世間一般の幽霊の認識にそぐわず穏和な性格で、子どもらしく天真爛漫だ。
そして赤ん坊の頃から傍にいたせいか、俺をお節介すぎる程に構ってくる。
小さな頃はそんな彼に甘えて、懐いていた俺だが年を経るに連れて、その過干渉ぶりが迷惑に感じるようになった。
彼は俺と二人きりの時でないと、俺の目には映らないし、声も聞こえない。本人曰く俺が見えない時でもずっと傍に居るらしいが俺には見えていないので確かめようもない。
最近の俺は彼からの干渉の煩わしさを避けようと、友人や家族となるべく長い時間一緒に居るようにしていた。
彼に対して疚しさを感じたりはしなかった。
下手をすれば両親以上に長い時間を共に過ごしてきた彼に対して、それくらいのことで彼は傷ついたりしないだろうという甘えに似た慢心があったからだ。
彼と顔を合わせずにいられない時は一生懸命話し掛けてくる彼を、無視し続けた。
そんな日々を繰り返すうちに彼も段々俺に構わなくなっていった。
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