俺の隣にはいつも一人の幽霊がいる

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 バチンっ!  平日の朝、両親と姉さんそれから俺の家族全員で朝食を取っていた時のこと。突如としてテレビが消えた。  電源ボタンを押しても画面はニュースを映すことはなく、壊れたのだと父さんが結論を出した。  最近買ったばかりなのにツイてないと両親と俺は笑ったけれど、姉さんだけは何やら物憂げな表情を浮かべていた。  「ねえ、アンタさ」  朝食を食べ終わって、さあ家を出ようと玄関扉のドアノブに手を掛けたとき、姉さんが真剣みを帯びた声音で話し掛けてきた。  「テレビの件、おかしいと思わない?」  いつも強気でサバサバしている姉にしては何だか歯切れが悪い物言いだった。  「おかしいって何が?」  『早く学校に行きたいんだけど』という本音を言外に伝えるつもりでおざなりな返事をした。  その意図を汲み取れない筈がないのに、姉さんは俺の抵抗を黙殺した。いつだって俺たち姉弟の力関係はそんな感じだ。  「あのテレビまだ全然新しかったでしょう?」  「不良品だったんじゃないの」  そういうことも偶にはあるだろう。  「でも、壊れた時さ……こうゾッと寒気とかしなかった?」  「はあ?何が言いたいわけ」  漠然とした話に痺れを切らして、結論を急かす。  「テレビが壊れたの、幽霊のせいじゃないかなって思ってるのよ」  『そんな馬鹿なことあるわけないだろ』と笑い飛ばすべきだったのかもしれない。けど、幽霊という存在に俺は心当たりがありすぎた。  自分がごくりと生唾を呑み込む音を何処か遠く感じる。  俺のそんな反応に姉さんが青ざめた顔をしていたけれど、俺は言い訳もせずにこの場から逃げ出すことしできなかった。
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