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帰宅してすぐ俺は自室に閉じ籠もった。
学校にいる間中、姉さんの話がどうしても頭から離れなくて、疑念を抱き始めていたからだ。
長年の付き合いで彼が悪い幽霊じゃないと分かっている。だがこの疑いを最早晴らさずにはいられない。
それにテレビが故障したことが彼以外の幽霊の仕業だった可能性もある。その場合は俺に日頃から張り付いて行動している彼のことだ、犯人の幽霊の正体をしっているかもしれない。
俺は彼に対する反抗心はこの際置いておいて話を聞くことにした。
「ねえ、君……居るんでしょう?」
いつもなら呼びかけると直ぐに返事をくれるのに、部屋には時計のカチコチという音が響くばかり。
キョロキョロと部屋を見回しても、その姿はない。
「どうしたの?」
俺をからかっているのだろうか?
今度は、部屋中を探して回った。纏められたカーテンの中、机の下、クローゼットの中……何処を探しても結局彼は見つからなかった。
こんなこと初めてだ。ここ最近無視してた時でも彼は俺の傍にずっと居たのに。
心がざわざわと落ち着かない。彼はいつの間にか俺のライナスの毛布になっていた。
もしかしたら俺が彼を避けていることに腹を立てたのだろうか、今の冷め切った頭で考えてみるとそれは至極当然なことだった。
無視されて、避けられて、辛くない人間なんていない。人間と同じように喜怒哀楽がある彼だってきっと例外ではない。
俺は彼に反抗しながら、俺から離れることのない彼に甘えていたんだ。
そして、愚かにも彼を手酷く傷つけた。
もはや彼への疑惑は頭の中から消し飛んでしまって、俺は母さんが夕飯だと呼びに来てくれるまで、部屋の中で呆然と立ち尽くしていた。
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