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episode249 末期症状
「あの……九条さん……」
「なあに?」
欠伸が出そうな口調とは裏腹に
周りの景色は飛ぶように過ぎてゆく。
「……時速200キロ出てるよ?」
「君が急いでと言ったろ?」
運転席の彼氏は穏やかな笑みを浮かべ
助手席のシートに張り付いた僕をチラリと盗み見る。
「いや……急いでとは言ったけど早すぎない?」
天宮家一の常識人が
分かっているくせに――。
「まあ、ポルシェだからね」
とぼけてまたアクセルを踏み込む。
「知らなかった?僕ってけっこうスピード狂なんだ」
「九条さん……」
分かってるよ。
似合わない冗談言うのだって
みんなみんな僕のためだ。
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