episode249 末期症状

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そしてそれは現実になった。 「うあっ……!」 短い呻き声を上げ 地上へ落ちて行ったのは僕ではなくルカだった。 しかし――。 「九条さん……?」 僕は助かったんだと素直に喜ぶには状況は悪すぎた。 「僕が……突き落としたんだ……」 風に巻き上げられる栗色の豊かな髪が 己の両手を見つめたまま呆然と立ち尽くす彼の顔を半分隠した。 「君が悪いんじゃない!」 僕は飛び起きて すぐに彼の手をとった。 「君は僕を助けようとしただけだ。だからそう……正当防衛ってやつだよ。君は悪くない!」 しかし何度言い聞かせたところで――。 「でも僕が殺した……今この手で僕が人を殺した」 救われない。 「ああ違う……君は悪くないんだったら……!」 僕は一番無垢な人の手を 穢させてしまった。
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