episode249 末期症状

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本来ならもっと早く 薫の入院している病院に着くはずだった。 方向音痴の僕がとんでもない方向さえ指さなければ。 ダメな僕が病院の名前さえちゃんと憶えていたなら。 「ごめんね。僕のせいだ……」 「とにかく車を降りて行こう」 なので病院に辿り着いたのはすでに丑三つ時に近かった。 魑魅魍魎どもが最も活発に動き回る時間だ。 もちろん吸血鬼もしかり――。 「誰もいないよ」 しかし病院内は静かなものだった。 救急病棟の受付にも人の気配はなく 病棟の電気もほぼほぼ消えてしまっていた。 「今日は急患のいない静かな夜なのかもね」 九条さんが入り口で尻込みする僕の手を引きながら言った。 「そうかな……」 「君の読み、外れたんじゃないの?」 それならいい。 それなら――断然いい。 しかし歩を進めるごと 僕は違和感を覚えずにいられなかった。
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