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「急患が来ないとナースステーションも空になるのかな?」
「まさか」
静かだ。
いくらなんでも静かすぎるのだ。
「空ってことはないだろう。病室の見回りに行ってるのかも」
「全員で?」
不気味な静寂の中にぼんやりと浮かび上がった
薄暗いナースステーションをのぞき込む。
「やっぱり誰もいな……」
僕が言い終わらないうちに
「いや、いる」
「くっ……九条さん!?」
九条さんはカウンターを乗り越えて
ナースステーションの中へ飛び込んだ。
そして――。
床に片膝着くようにして
暗闇に倒れていた看護服姿の若い女の子を抱き起した。
「あ、あっちにも!」
目を凝らし見ていると床の上にもう一体
マネキンのように横たわるナースの姿が――。
「どうした?何があった?」
九条さんは抱き起したナースの頬を軽く打ち問いかける。
でも彼女はぐんにゃりして微かな呻き声を洩らしただけだった。
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