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階段を駆け上がる。
「薫くんの部屋は?」
すぐに九条さんが追いかけてきた。
「この上だよ」
息切れする。
怯えているせいだ。
自分たちの足音が追いかけてくるような錯覚に陥る。
「あっち……!」
薫の病室に向かい廊下を走りだした頃には
九条さんは追いついて僕の隣に並んだ。
それで言うんだ。
「君は行かなくていい――僕が見てくる」
「は?!」
そんなわけにいくか――。
巻き込みたくさえなかったのに。
「……和樹っ!」
僕は知らん顔でスピードを上げた。
彼を危険に晒すわけにはいかない。
何があっても僕が先に病室のドアを開けるんだ。
「ったく……言うことを聞かないな!」
九条さんは本気で怒って
なんとか僕を捕まえようとするけれど――。
「ごめんね、でもダメ!」
8つの年の差は大きいんだ。
僕はラストスパートをかけて
先に薫の病室のドアノブを掴んだ。
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