episode249 末期症状

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ドアを開いた瞬間。 えもいわれぬ冷たい空気が流れてきた。 「薫お兄様っ……!」 堪えきれず僕は大声で薫の名を呼ぶ。 しかしそこにいるはずの兄の姿はなく――。 見れば大きく開いた窓から吹き込む風が 薄っぺらいカーテンを不気味に揺らしていた。 それはまるで死神の手招き――。 僕は後先考えず部屋に足を踏み入れる。 ベッドに触れる。 掛け布団はこんもりと盛り上がっておりまだ暖かい。 つい先刻までここに薫がいたのは確実だ。 だとしたら――。 「ウソだろ……」 カラカラの喉を鳴らし 僕が窓辺に駆け寄ったところで。 「薫くんは……?」 九条さんが部屋に駆け込んできた。 何とも言えなかった。 今ここにいないとしか――。 僕は窓枠に手をかけ おそるおそる階下をのぞき込む。
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