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「どうなってるの……?」
悪夢のような光景に
しばし思考力を断たれた僕は
「よく見ろ。外付けの梯子を登ってる」
「あ……」
九条さんに肩を叩かれてようやく
ルカの足元に屋上へ続く細い鉄の階段を見つける。
あいつの身体が宙に浮いて見えたのは
足首まであるローブが時折その梯子を覆い隠すからだ。
魔法は解けた。
しかし不安定なことに変わりはない。
ルカは身動きしない薫を抱いて屋上へ向とかっているのだ。
「あ、ちょっと……!」
話し合う間もなく九条さんが唐突に駆け出した。
なんとしても僕より先に屋上へ上がるつもり――。
「言わなかったか?僕は高校までリレーの選手だったって」
先刻は油断しただけだとばかり
サラブレッドめ――僕をからかうように余裕で前を行く。
「高校時代?一体いつの話?僕はつい去年だけれど――」
僕だって負けちゃいない。
意地悪を言いながら階段を一段飛ばしで駆け上がる。
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