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一年七組の佐々木円香は、俺の事が好きらしい。
そんな噂話を、突然クラスメートの及川から聞かされたのは、夏休みまでのカウントダウンが開始された、一学期の終わり。
朝、いつもの通学電車の中でだった。
「……ん?」
「だから、一年七組の佐々木円香って子がお前の事を好きらしいんだって」
「うん。それは、今聞いたよ。で……その佐々木円香ってのは誰だ?」
巷でも有名な進学校であるうちの高校は、クラスをⅠ類(難関大学進学コース)、Ⅱ類(一般コース)、Ⅲ類(スポーツ・芸術コース)といった具合に分けていて、一学年10クラス、全校生徒は800人を越える今時珍しいマンモス校だ。
現在、三年生。
最終学年ともありながら、俺は同じ学年の生徒の、名前と顔の一致が半分も出来ていない状態で卒業の日を迎えるだろう、と確信している。
そんな俺が、二つ下の女子生徒の、クラスと名前を聞かされた所で、「ああ……あの子ね、うんうん」となる訳が無い。
及川よ、お前は馬鹿なのかと問いたい。
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