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「いや、俺も顔は知らないんだけどさ」
「何だよ、それ……」
確かに、俺と及川はⅡ類の一般クラス。学力は人並みか、それ以下だろう。
人の顔と名前を一致させれられず、神経衰弱ゲームを途中で投げ出した俺と、クラスと名前だけしか知らない、その佐々木円香という人物をあたかも知り合いの様に話す及川は、同じ穴のムジナなのだ。
マンモス校で広げられてしまった噂話は、当人の元へと辿り着くまでに、随分と揉まれ擦られ磨り減らされてて来たのだろう。
こうなって来ると、佐々木円香が不憫でならない。
いや、そもそも佐々木円香なんて女子生徒が本当に実在するのかも疑わしい。
これといったスキルも無ければ、ルックスに光る物がある訳でもない。
中肉中背、普通の高校生。
そんな俺を好きになってくれる女なんて、本当に……。
「おい、及川……。その佐々木円香についての情報は他には無いのか」
「え、何だよ。興味無さそうな顔して、めちゃくちゃ気になり始めてるじゃん」
「ち、違う……。ねもはもない噂話を広められるのが迷惑なだけだ」
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